Case事例紹介

八潮市の道路陥没地域における
ALOS-2の時系列InSAR解析




東京科学大学 松岡 昌志
テラフェーズ 大串 文誉

ALOS-2データはJAXAのワーキングを通じて提供していただきました。記して謝意を表します。

目的

  • 2025年(令和7年)1月28日に埼玉県八潮市の中央一丁目交差点において道路陥没事故が発生した。この道路陥没の前から道路変状などの予兆があったのかどうか、合成開口レーダを搭載した人工衛星画像による時系列InSAR解析を行い、陥没地域周辺の地盤変位の推移を調べる。
  • 人工衛星はALOS-2(Lバンド)を,解析期間を2021年1月〜2025年1月の陥没直前とする。
  • 解析手法は, NN-PSI* を適用する。

Study Area

2021/1/13~2025/1/8(20シーン)

NN-PSI Mean Velocity [mm/year](2021/1/13~2025/1/8)

Displacement (2021/1/13~2025/1/8)

Displacement (2017/1/1~2024/12/31)

考察

  • 2021年1月〜2025年1月のALOS-2衛星のデータを用いて時系列InSAR解析(NN-PSI)を実施して、陥没前に道路に予兆を示すような変位がみられたのかを調べた。
  • 陥没箇所のやや東側は比較的大きな沈下傾向がみられ,陥没箇所の直近においても2023年頃から2024年にかけて沈下傾向がみられる。一方、陥没箇所のやや南西においては沈下傾向はみられない。
  • 車両が結果に与える影響が不明なため,今後はシミュレーションを通して検討していく必要がある。
  • Sentinel-1の結果を含めた総合的な考察
    ALOS-2(Lバンド)は空間分解能は高いもののマイクロ波の波長が長いために変位計測精度が低い。一方、Sentinel-1(Cバンド)は空間分解能が低いが、マイクロ波の波長が短いために変位計測精度が高い。このようにトレードオフの関係があること、また、両者がまったく同じ場所を計測しているわけではないために、比較考察することは困難であるが、総じて陥没箇所のやや東側では陥没に至るまでに沈下傾向がみられること、陥没箇所の直近(北側)でも沈下傾向があった可能性があること、西側は局所的に沈下していた場所があった可能性がある。