Case事例紹介

Sentinel-1衛星による山口県上関大橋の
段差事故のモニタリング




東京科学大学 松岡 昌志
テラフェーズ 大串 文誉

Sentinel-1衛星による山口県上関大橋の段差事故のモニタリング,地域安全学会梗概集,No.54, pp.211-212, 2024.5.

背景

2020年11月14日午後8時頃に山口県の上関大橋において、室津側の主桁端部が浮き上がったことで路面に段差が発生し、乗用車1台が衝突事故を引き起こした。 1969年に完成したこの橋のように、高度経済成長期に建設されたインフラ施設は我が国に数多くあり、維持管理が課題になっている。 老朽化だけでなく人口減少に伴う労働力の減少などにより、点検には多大なコストと労力がかかっており、管理者の負担になっている。

2020年11月山口県上関大橋での20cmの段差(NHK)

目的

段差事故発生以前より上関大橋を観測しているSentinel-1衛星の合成開口レーダ(SAR)画像を用いた時系列干渉解析(NN-PSI)を行い、
段差発生を予見できたのかについて考察する。

NN-PSI
(Non-Linear Non-Parametric Persistent Scatterer Interferometry )
都市域の地盤や建物の変動をより厳密に推定するために、既往の時系列干渉法(PSI)を改良して非線形的な変動の把握を可能にした手法

SARによる観測

干渉SAR解析

上関大橋(3D測量および水準測量)

Sentinel-1衛星による観測

橋梁と水面による多重反射

恒久散乱体の分布(時系列コヒーレンスが0.3以上)

girder-1, girder-2の橋桁における位置

LOS(視線)方向の時系列変位

まとめ

2020年11月14日に山口県の上関大橋において発生した路面段差発生を未然に予測できたのかを検証するために、2017年1月から段差発生後まで上関大橋を観測したSentinel-1衛星の時系列干渉解析(NN-PSI)から橋桁の変位を推定した。
その結果、室津側の段差発生付近および橋脚付近においては2020年に入ってからそれ以前とは異なる変位挙動を示していたことを明らかにした。